冷やす?温める?迷った時に読む豆知識

【 このページの監修者 】
このページは、厚生労働大臣免許の柔道整復師の宇治小倉あゆむ整骨院院長が、解剖学、生理学、運動学、病理学概論、一般臨床医学、外科学概論、整形外科学、柔道整復理論などの知識を元に、当院の情報発信ポリシー(EBM:根拠に基づく医療)に則って作成しています。
身体が痛い時は冷やす?温める?
普段、ぎっくり腰や捻挫など多くの患者様を診させて頂く中でよく頂く質問「冷やした方がいい?温めた方がいい?」についてご説明させて頂きます。
このページを読むと、捻挫をした時、ぎっくり腰・寝違えをした時に「温めた方が良いの?冷やした方が良いの?」の疑問に関して、医学的なエビデンスのある知識を身に着けることができます。
痛みがある時に最も重要なことは、炎症があるかどうか?で、もし炎症がある場合は、患部を冷やすことで炎症を抑えてさらなる損傷を防ぐ効果が期待できます。炎症は、痛む部位が赤くなったり、腫れたり、熱を持ったりすることで判断できることが多く、このような症状が見られる場合は、炎症反応が起こっている証拠となります。
ただし、近年の医学では炎症反応そのものは身体の自然な治癒プロセスの一部であるとも考えられています。炎症によって損傷した組織の修復に必要な免疫細胞や栄養素が患部に集まるため、過度に冷やしすぎると回復がかえって遅れる可能性があるという見解もあります。そのため、冷却はあくまで急性期の痛みや腫れを和らげるための一時的な対処として行い、長時間にわたる過度な冷却は避けることが大切です。
炎症がある=冷やす、炎症が無い=温める
結論から言うと、当院では炎症がある場合は「冷やす」。炎症がない場合は「温める」ことを推奨しています。
かなり感覚的な話となりますが、
冷やすと痛みが和らぐ場合=冷やす
温めると「ジンジンとした痛み」や「違和感」を感じる=冷やす
というイメージです。
冷却には氷や冷却パック、冷水などを用いることが一般的ですが、直接皮膚に触れると凍傷の恐れがあるため、必ずタオルなどで包んでから当てるようにしてください。冷やすことで血管が収縮し、炎症を引き起こす物質の流れを抑え、痛みを和らげる効果があります。
【 冷却の目安時間 】
1回あたり15~20分程度を目安に冷却し、その後は1~2時間ほど間隔をあけてから再度冷やすようにしてください。受傷後48~72時間以内が冷却の効果が特に期待できる時期とされています。
【 冷やしすぎにご注意ください 】
長時間の冷却は、凍傷だけでなく神経障害(しびれや感覚の低下)を引き起こす危険性があります。冷やしている部位が白くなったり、しびれを感じたりした場合は、すぐに冷却を中止してください。特に、氷を直接皮膚に当てたまま寝てしまうなどの行為は大変危険ですのでお控えください。
また炎症がないと思い、温めた時に痛みが増したり、嫌な感じがする場合は、炎症があることが多いので温めるのをやめ、冷やすことをおすすめします。
炎症が落ち着いた後は温める!
炎症が収まった後は、温める方が効果的です。温めることで血流が良くなり、必要な栄養素や酸素が損傷した部位に届きやすくなります。また、疼痛の緩和や筋肉の緊張の解放にも効果的です。温める方法には、お風呂にゆっくり浸かったり、ホットパックを使用したりする方法があります。温めて痛みが増す場合は、再度炎症が発生している可能性がありますので、その場合は冷やす対応に切り替える必要があります。
痛みに対する注意点
痛みの原因がはっきりしている場合、たとえばねじれたり打撲したりした明確な理由がある場合は、炎症が生じていると考えられますので、初期は冷やすことが基本です。ただし、温める場合も冷やす場合も、症状の変化を注意深く観察し、必要に応じて適切な対応を行うことが大切です。
【 最新の考え方:RICE処置からPEACE & LOVEへ 】
従来、急性外傷の応急処置としてはRICE処置(Rest:安静、Ice:冷却、Compression:圧迫、Elevation:挙上)が広く知られてきました。しかし、2019年にスポーツ医学の学術誌で提唱された「PEACE & LOVE」という新しいガイドラインが注目されています。
◆ PEACE(受傷直後の対応)
Protection(保護):痛みが出る動作を避け、患部を保護する
Elevation(挙上):患部を心臓より高い位置に上げ、腫れを抑える
Avoid anti-inflammatory modalities(抗炎症処置を避ける):過度な冷却や消炎鎮痛剤の使用は、身体の自然な治癒反応を妨げる可能性がある
Compression(圧迫):弾性包帯などで圧迫し、腫れの拡大を防ぐ
Education(教育):正しい知識を持ち、過度な治療に頼らず身体の回復力を信頼する
◆ LOVE(受傷後しばらくしてからの対応)
Load(適切な負荷):痛みが許す範囲で、早期から適切な負荷をかけて回復を促す
Optimism(楽観的思考):前向きな気持ちが回復を促進する
Vascularisation(血流促進):有酸素運動などで血流を促し、組織の修復を助ける
Exercise(運動):段階的な運動で可動域や筋力を回復させる
この考え方のポイントは、「完全な安静」よりも「痛みの範囲内での適切な活動」が回復を早めるという点です。ただし、自己判断での無理な運動は悪化の原因になりますので、専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
まとめ
痛みがある場合に「冷やす」か「温める」かは、症状や患部の状態、発生してからの時間によって異なります。正しい知識と対応で回復も早くなります。身体に痛みがあるときは、まずは冷静に状況を判断し、適切な処置を行ってください。
【 医療機関への受診をおすすめするケース 】
以下のような場合は、早めに専門の医療機関を受診されることをお勧めします。
・痛みが2~3日経っても改善しない、または悪化している場合
・患部の腫れが引かない、またはどんどん大きくなる場合
・関節が動かせない、または体重をかけられない場合
・しびれや感覚の異常がある場合
・患部が明らかに変形している場合
・原因に心当たりがないのに痛みが繰り返される場合
安全な日常生活を送るために、痛みに対する初期対応の知識を持っておくことが、何よりも重要です。
よく頂く質問
捻挫をしたらまず冷やすべきですか?温めるべきですか?
捻挫の直後は炎症が起きているため、まず冷やすことが基本です。1回15~20分を目安に、タオルで包んだ氷や冷却パックを当ててください。受傷後48~72時間は冷却が効果的とされています。炎症が落ち着いてきたら、温めることで血流を促進し回復を助けます。
ぎっくり腰になったときはお風呂に入っても大丈夫ですか?
ぎっくり腰の発症直後は炎症が起きていることが多いため、長湯は避けた方が安心です。温めることで痛みが増したりジンジンした感覚がある場合は炎症が残っているサインですので、シャワー程度に留めてください。痛みが落ち着いてきたら、ぬるめのお湯にゆっくり浸かることで筋肉の緊張がほぐれ、回復を助ける効果が期待できます。
冷やす時間はどれくらいが目安ですか?
1回あたり15~20分が目安です。冷却後は1~2時間の間隔をあけてから再度冷やしてください。長時間の連続冷却は凍傷や神経障害のリスクがあるため、冷やしている部位が白くなったりしびれを感じた場合はすぐに中止してください。
湿布は冷やすのと同じ効果がありますか?
冷感タイプの湿布はメントールなどの成分でひんやりした感覚を与えますが、氷のように患部の温度を下げる効果は限定的です。急性期の炎症を抑えるためには氷や冷却パックによる直接的なアイシングが効果的です。湿布は消炎鎮痛成分による痛みの緩和が主な目的であり、用途が異なります。
RICE処置とPEACE&LOVEの違いは何ですか?
RICE処置は安静・冷却・圧迫・挙上を基本とする従来の応急処置です。PEACE&LOVEは2019年に提唱された新しい考え方で、過度な安静や冷却が回復を妨げる可能性を指摘し、痛みの範囲内での適切な負荷や段階的な運動の重要性を加えています。どちらも急性期の保護と圧迫は共通していますが、回復期のアプローチに違いがあります。
参考文献・エビデンス
当コラムで紹介した急性期の冷却および慢性期の温熱療法に関する指針は、以下の医学的根拠およびガイドラインに基づいています。当院が参照する情報源の詳細は「情報の根拠・参照元について」をご確認ください。
【1】急性外傷(捻挫・打撲等)に対する応急処置
公益社団法人 日本整形外科学会 「症状・病気をしらべる:スポーツ外傷の応急処置(RICE処置)」
受傷直後の炎症(腫れ・熱感)を抑えるための冷却(Icing)の重要性と、血管収縮による出血・腫脹抑制のメカニズムが定義されています。
日本整形外科学会 公式サイトを確認する →
【2】温熱療法による血流改善と疼痛緩和
Nadler SF, et al. "Continuous low-level heat wrap therapy provides more efficacy than Ibuprofen and Acetaminophen for acute low back pain." Spine. 2002;27(10):1012-1017.
温熱刺激が血流を促進し、筋肉の緊張を緩和することで、慢性的な痛みや回復期の組織修復に寄与する有効性を示した研究です。
PubMed で論文を確認する →
【3】急性軟部組織損傷の最新ガイドライン(PEACE & LOVE)
Dubois B, Esculier JF. "Soft-tissue injuries simply need PEACE and LOVE." British Journal of Sports Medicine. 2020;54(2):72-73.
従来のRICE処置に代わる新しい外傷管理の枠組みとして、急性期の「PEACE」と回復期の「LOVE」を提唱した論文です。過度な冷却や安静が回復を妨げる可能性を指摘し、適切な負荷と段階的な運動の重要性を示しています。
PubMed で論文を確認する →
【4】柔道整復師の学術的背景
「柔道整復学・理論編(改訂第6版)」:公益社団法人全国柔道整復学校協会 監修
柔道整復師の国家試験カリキュラムにおける「冷罨法(れいあんぽう)」および「温罨法(おんあんぽう)」の適応基準(炎症期の判断と処置)に基づいています。
※当院では、最新の臨床知見に基づき、患者様一人ひとりの炎症状態に合わせた最適なアドバイスを行っております。当院の情報発信における方針・免責事項については「当院の情報発信ポリシーと専門的根拠について」をご覧ください。
【 併せて読んでほしいページ 】
| 住所 | 〒611-0042京都府宇治市小倉町蓮池173-13 宇治小倉あゆむ整骨院 |
|---|---|
| 施術時間 | 平日:9:00~19:00 土・ 日:9:00~18:00(実費施術のみ) 休診日:火曜日、金曜日、祝日 |
| 駐車場 | 車・バイク・自転車 : 院前に駐輪スペース有 |
| 最寄駅 | 近鉄小倉駅:徒歩9分 |


